
あなたは戦略と戦術の違いを知っていますか?
まぁ、これってマーケティング用語ではなくて、戦争用語ではあるんですけど、一応、マーケティング的にも大切な考え方なので、解説しておきます。
会話を聞いていると、「それは素晴らしい戦略だ!」「戦略的ですね!」という言葉が飛び交ったりますよね。
でも、ほとんどの場合、そこで語られているのは「戦術」の話なんです。
この戦略と戦術をちゃんと理解して、どちらも考えることが経営者には欠かせません。
そもそも戦略と戦術って何?
まずは基本的な考え方から説明します。
戦略:大局的な指針。目には見えず、方向性だけがある。
戦術:局地的な戦い方。目に見えるので、分かりやすい。
簡単に説明すると、こんな感じです。
ただ、これだとほとんどイメージできないと思うので、まずは戦争を例にとって説明します。
戦争における戦略と戦術
戦略編
なんだかコアな話になってしまうんですけど、ここでは三国志を例にとって説明しますね。
中国の後漢末期には、中国大陸の半分近くを曹操(そうそう)が支配していました。
そして、4分の1くらいを孫権(そんけん)が治めていました。
そんな状況で劉備(りゅうび)という人物は小さな領土しかなく、今にも曹操に支配されそうな状況だったんです。
そのとき、劉備が藁にもすがる思いで招いたのが、名軍師の諸葛亮(しょかつりょう)でした。
諸葛亮は劉備に、「天下三分の計」を授けます。
これは、「孫権と手を組んで曹操と戦い、まずは三者で天下を三分する」というものです。
そこから天下統一を目指す、というものでした。
この「天下三分の計」は、具体的な戦場での戦い方ではなく、どういう方向性で戦っていくかの指針でしかないんです。
なので、「天下三分の計」は戦略なんです。
戦術編
これに対して、戦術とは何なのでしょうか?
同じく三国志で見てみましょう。
劉備はその後、天下三分の計にのっとり、孫権と組んで曹操と戦います。
これが有名な赤壁の戦いです。
強い水軍をもつ孫権・劉備連合軍に対して、水軍慣れしていない曹操軍は、船同士を鎖でつなぎ、揺れないようにすることで船酔いを防ぎました。
そんな曹操の大軍を前に、孫権・劉備連合軍は火攻めをして曹操の大船団を撃退したんです。
このときの、曹操の船をつなぐ方法だったり、連合軍の火攻めが戦術にあたります。
このように、戦術は目に見える形のものなんです。
マーケティングにおける戦略と戦術
そうはいっても、それはあくまでも戦争の話ですからね。
じゃあ、マーケティング的にはどう考えたらいいのでしょうか?
ここからは、マーケティング的な戦略と戦術について説明します。
戦略編
ここでは、有名な通販化粧品会社、再春館製薬所を例にとってお話します。
再春館製薬所といえば、ブランドはドモホルンリンクルですね。
エイジングケアの化粧品ブランドです。
再春館製薬所の戦略は、ざっとこんな感じだと思われます。
(戦略は目には見えにくいので、はっきりとは分かりません)
「メインターゲットを60代以上の富裕層女性として、高付加価値のエイジングケア化粧品をラインで展開していく。
ドモホルンリンクルで基礎化粧品をそろえてもらい、エイジングケア化粧品のシェアを拡大する」
そして、この戦略に基づいて、すべての戦術が決まっていきます。
戦術編
では、さきほどの再春館製薬所の戦略だったら、どんな戦術になるのでしょうか?
・1週間分の無料お試しセットで見込み客を集める。
・その後、ステップメールで顧客教育をしていく。
・初回購入キャンペーンではハーフサイズ商品をラインで売る。
・2回目購入のときに、フルサイズ商品のセットへ誘導する。
だいたいこのような戦術になってきます。
戦略がラインでのセールスなので、基本的に単品販売を推すことはありません。
あくまでも、初回購入のときからラインで買ってもらうことになります。
もちろん、最初からフルラインで売ることもありますが、基本ラインと徹底ラインに分けることで、まずは4点買いなどを勧めたりもします。
このような戦術を練ったとしても、それはラインで使ってもらうためのステップであり、やっぱり根底には戦略が活きているんです。
戦略のない戦術はダメ
キャンペーンでとにかくオトクに売っていく会社がよくありますよね。
このキャンペーンのベースに一貫性があればいいのですが、そうではない、戦略のないキャンペーンをするのはダメです。
なぜなら、それは目先の利益を追うことでしかなく、長期的な展開を考えていないからです。
たとえば、定期購入会員などのある会社があったとします。
その会社では定期購入の会員は10%割引で商品が買えるのに、月々のキャンペーンでそれよりもオトクに商品を買えたらどうでしょうか?
定期会員になるメリットなんてないですよね?
これではいけないですよね?ということなんです。
だからこそ、まずは長期的な展開策である戦略を練ってから、その上で戦術を決めて実行していきましょう。
あなたの会社には戦略がありますか?